フロスと歯間ブラシ、どちらを使う?サイズ選びと使い分けの基準

「歯ブラシだけでは足りません」とお伝えすると、ではフロスと歯間ブラシのどちらを使えばよいのか、というご質問をよくいただきます。売り場に行くと種類も多く、迷ってしまうというお声も聞きます。

この二つは似た道具に見えますが、届く場所が違います。適した場所で使わなければ、時間をかけても汚れは残ってしまいます。大阪市西区・九条の当院で実際にお伝えしている選び方と使い方を、この記事に整理しました。

目次

  1. 歯ブラシが届かない面がある
  2. 二つの道具は届く場所が違います
  3. 歯間ブラシはサイズがすべてです
  4. フロスの通し方
  5. 出血しても、やめないでください
  6. いつ、どれくらい使うか
  7. 使ってはいけない場所はありません
  8. まとめ|すき間の広さで道具を選びます

1. 歯ブラシが届かない面がある

歯の表面は、外側・内側・噛む面・そして隣の歯と接している面に分けられます。歯ブラシの毛先が届くのは、このうち前の三つまでです。隣の歯と接している面には、どれほど丁寧に磨いても毛先は入りません。ここが手つかずのまま残ります。

むし歯も歯周病もそこから始まります

歯と歯のあいだは、汚れが溜まりやすく、唾液による洗浄も届きにくい場所です。むし歯ができやすいのも、歯ぐきの炎症が始まりやすいのも、この面からです。歯ブラシだけの手入れでは、口の中のおよそ4割の面が触れられていないことになります。

歯ブラシだけでは届かない面 4割 が手つかず 歯ブラシで磨ける面 外側・内側・噛む面 歯ブラシが届かない面 隣の歯と接している面 だから道具を足す フロスか歯間ブラシで補う 歯並びや歯の形によって、届きにくさには個人差があります

▲ 隣の歯と接している面には、毛先が入りません

2. 二つの道具は届く場所が違います

フロスは糸状の道具で、歯と歯がぴったり接している狭いすき間に入ります。歯間ブラシは小さなブラシで、歯ぐきが下がってすき間が広がった部分を掃除します。狭い場所に歯間ブラシは入りませんし、広い場所ではフロスの効率が落ちます。

どちらか一方では足りないことも

同じ口の中でも、前歯は狭くて奥歯は広い、という方は珍しくありません。その場合、前歯はフロス、奥歯は歯間ブラシ、という使い分けになります。すべての場所を一つの道具でまかなおうとしないことが大切です。

フロスと歯間ブラシ 比較項目 フロス 歯間ブラシ 糸状 小さなブラシ 適したすき間 狭い・接している 広がっている 歯ぐきが下がった所 汚れを取りきれない 得意 若い方・子ども 向いている 入らないことが多い ブリッジの下 専用のものが必要 使いやすい 慣れやすさ 少し練習が要る 比較的わかりやすい サイズ選び ほぼ不要 重要

▲ すき間の広さによって、適した道具が変わります

3. 歯間ブラシはサイズがすべてです

歯間ブラシで最も大切なのはサイズ選びです。細すぎると汚れに届かず、通しているだけになります。逆に太すぎるものを無理に押し込むと、歯ぐきを傷つけ、押し広げてしまいます。すき間の広さは場所ごとに違うため、複数のサイズを使い分けることもあります。

抵抗なく通る、いちばん太いもの

目安は、痛みなくすっと通る中で最も太いサイズです。入れるときに強い抵抗を感じる、出血が続く、という場合は太すぎます。ご自身での判断が難しい場合は、検診の際にお口を見ながら適したサイズをお伝えできます。なお、歯周病の治療の一環として行う清掃指導は保険が適用されます。疾患がなく予防を目的とする場合は自由診療(保険適用外)となることがありますので、事前にご説明します。道具そのものは市販品で十分です。

サイズ選びの考え方 1 細すぎる 通るだけで 汚れに届かない 2 ちょうどよい 抵抗なく通る 中で最も太いもの 3 太すぎる 無理に押し込むと 歯ぐきを傷める 4 場所で変える 前歯と奥歯で 違って当然です 場所によってすき間の広さは違います。複数サイズの併用も普通のことです

▲ 強い抵抗を感じるサイズは使わないでください

4. フロスの通し方

フロスは、勢いよく入れると歯ぐきを傷つけます。前後に小さく動かしながら、ゆっくり通してください。すき間に入ったら、片方の歯の面に沿わせて上下に数回動かし、次に反対側の歯の面にも沿わせます。一つのすき間で二つの面を掃除するイメージです。

引き抜くときも注意します

詰め物のふちに引っかかると、そのまま引き抜いたときに外れてしまうことがあります。抜けにくいときは、無理に引かず、糸の端を離して横に引き抜いてください。特定の場所でいつも引っかかる場合は、詰め物に段差がある可能性がありますのでご相談ください。

フロスの使い方 1 ゆっくり通す 前後に小さく動かしながら 2 片側の面に沿わす 上下に数回動かす 3 反対側も同じく 面を変えて繰り返す 4 静かに抜く 引っかかれば横から 勢いよく入れると歯ぐきを傷つけます

▲ 一つのすき間で、両側の面を掃除します

5. 出血しても、やめないでください

使いはじめに出血することがあります。多くの場合、これは傷つけたからではなく、すでに炎症があった場所から出ています。炎症のない歯ぐきは、正しく使えば出血しません。数日から2週間ほど続けるうちに、出血は落ち着いてくることが多くあります。

続いても出血する場合

2週間ほど続けても出血が変わらない、あるいは特定の1か所だけ出血や痛みが続くという場合は、歯石が深いところに付いている、または別の原因があることが考えられます。この場合は自己流で続けず、一度確認させてください。

使いはじめてからの歯ぐきの変化 最初 出血する 炎症がある証拠 やめずに続ける 数日 少しずつ減る 腫れが引いてくる 毎日続ける 2週間 落ち着く 引き締まってくる 習慣にする 続かない時 原因を確認 1か所だけ続く等 受診をおすすめします 変化の現れ方には個人差があります

▲ 出血は炎症のサインで、続けることで落ち着いていきます

6. いつ、どれくらい使うか

毎食後に行えるのが理想ですが、続かなければ意味がありません。現実的には、1日1回、就寝前に行っていただくのが最も効果的です。就寝中は唾液が減り、細菌が増えやすくなるためです。まずは1日1回を確実に続けることを目標にしてください。

順番は歯ブラシより先でも構いません

先に歯間の汚れを落としておくと、そのあとの歯みがきで使う薬用成分が届きやすくなるという考え方があります。順番よりも、毎日続くかどうかのほうが結果に効きます。ご自身がやりやすい順で構いません。

続けるための工夫 洗面所の見える場所に置く まず1日1回から始める 就寝前を基本の時間にする 全部の歯間を一度にやろうとしない 疲れた日は前歯だけでもよい 検診で使い方を確認してもらう 1日1回、就寝前を目標にしていただくのがおすすめです

▲ 完璧を目指すより、毎日続くことを優先してください

7. 使ってはいけない場所はありません

「フロスを使うとすき間が広がるのでは」というご心配をいただくことがありますが、正しく使う限りそうはなりません。むしろ、汚れを放置して炎症が続くほうが、歯ぐきが下がってすき間が広がります。ブリッジや矯正装置が入っている場合も、専用の道具があります。

装置が入っている方こそ必要です

ブリッジの下や矯正装置の周りは、汚れが溜まりやすく歯ブラシが届きにくい場所です。糸を通すための補助具や、装置用の細いブラシがあります。どれを使えばよいかは、お口の状態を見てご案内します。

よくある誤解と、実際のところ よくいただくご心配 ・すき間が広がるのでは ・出血するのでやめたほうがよい ・歯ブラシだけで足りるのでは ・装置があるから使えない ・面倒で続けられない 実際のところ ・正しく使えば広がりません ・出血は炎症のサイン。続けると減ります ・4割の面に毛先は届きません ・装置用の道具があります ・1日1回・就寝前から始めましょう

▲ 心配なことがあれば、そのままおたずねください

まとめ|すき間の広さで道具を選びます

歯ブラシの毛先は、隣の歯と接している面には届きません。むし歯も歯周病もこの面から始まるため、道具を足す必要があります。狭くて接しているすき間にはフロス、歯ぐきが下がって広がった場所には歯間ブラシ。同じ口の中でも場所によって使い分けます。

歯間ブラシはサイズ選びが結果を左右します。目安は、抵抗なくすっと通る中で最も太いものです。使いはじめの出血は、多くの場合すでにあった炎症からのもので、続けるうちに落ち着いていきます。2週間ほど経っても変わらない場合や、1か所だけ続く場合はご相談ください。歯ぐきの状態や適した道具には個人差がありますので、検診の際にお口を見ながらお伝えしています。大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでどうぞ。

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出典・参考資料

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
  • 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
  • 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
  • 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。詳しくは歯科医師にご相談ください。