歯が折れた・抜けた|30分が分かれ目になる、その場での対応

転んで前歯をぶつけた、スポーツ中に接触して歯が欠けた。お子さんに起きることも、大人に起きることもあります。あわてて何をすればよいか分からないまま時間だけが過ぎてしまった、というお話をうかがうことがあります。

歯の外傷では、その場での対応が結果を大きく左右します。特に、歯が完全に抜けてしまった場合には、最初の30分ほどの扱い方で、元に戻せるかどうかが変わります。大阪市西区・九条の当院からお伝えしたい内容をまとめました。

目次

  1. 抜けた歯は、乾かさないでください
  2. 急いでください
  3. 折れた・欠けた場合
  4. ぐらついている・位置がずれた場合
  5. あとから症状が出ることがあります
  6. お子さんの場合
  7. 起こさないための備え
  8. まとめ|乾かさず、頭を持って、すぐに受診

1. 抜けた歯は、乾かさないでください

歯が完全に抜けてしまった場合、もっとも大切なのは根の表面を乾かさないことです。根の周りには、歯を骨につなぎとめていた薄い組織が付いています。この組織が生きているうちに元に戻せれば、再びくっつく可能性があります。乾いてしまうと、その可能性は急速に下がります。

触ってよいのは、噛む面だけです

拾い上げるときは、必ず歯の頭の部分だけを持ってください。根の部分を指でつまんだり、こすったりすると、大切な組織が傷つきます。汚れが付いていても、ブラシで洗ったり、消毒したりしないでください。落としてしまった場合は、水で軽くすすぐ程度にとどめます。

抜けた歯を運ぶときの保存方法 1 保存液 薬局などで扱う もっとも適する 2 牛乳 手に入りやすい 冷やして運ぶ 3 口の中 頬と歯ぐきの間 誤飲に注意 4 生理食塩水 あれば使える 水道水は避ける 水道水に長く浸けることは避けてください

▲ 上のものほど適していますが、乾かさないことが最優先です

2. 急いでください

抜けてから元に戻すまでの時間が短いほど、結果はよくなります。目安として30分以内、少なくとも1時間以内には歯科を受診していただきたいところです。時間が経つほど根の周りの組織は失われ、戻しても定着しにくくなります。まずは連絡をして、向かってください。

連絡してから向かうと早く進みます

受診前にお電話をいただけると、準備を整えてお待ちできます。到着してからの流れが早くなりますので、移動中に同行の方から連絡していただくのがよいと思います。診療時間外の場合は、地域の休日夜間の窓口をご案内しています。

経過時間と、戻せる見込み 30分以内 もっとも良い 組織が生きている すぐ受診を 1時間以内 まだ望みがある 適切な保存が前提 乾かさないこと 数時間 条件が厳しい 組織が失われる それでも持参を 乾燥した 定着しにくい 組織が死んでいる 別の方法を検討 結果には個人差があり、状況によっても異なります

▲ 乾かさずに、できるだけ早く受診してください

3. 折れた・欠けた場合

完全に抜けてはいないものの、一部が欠けたという場合もあります。欠けた破片が残っていれば、それも持参してください。接着して戻せることがあります。欠け方が浅ければ処置は簡単に済みますが、神経に達している場合には、その日のうちの対応が必要になります。

しみる・血が見えるときは急いでください

折れた断面に赤い点が見える場合、神経が露出している可能性があります。この状態では細菌が入りやすく、放置すると神経を取る治療が必要になることがあります。強くしみる場合も同様です。痛みの有無にかかわらず、当日中の受診をおすすめします。

その場でしてほしいこと・避けてほしいこと してほしいこと ・歯の頭の部分を持って拾う ・牛乳か保存液に入れる ・出血はガーゼで押さえる ・欠けた破片も持参する ・すぐに連絡して受診する 避けてほしいこと ・根の部分を指でつまむ ・ブラシでこすって洗う ・消毒液に浸ける ・ティッシュに包んで乾かす ・様子を見て翌日以降に受診する

▲ よかれと思った処置が、戻せる可能性を下げることがあります

4. ぐらついている・位置がずれた場合

歯が抜けきってはいないものの、ぐらついていたり、本来の位置からずれていたりすることがあります。この場合、無理に押し戻そうとしないでください。周りの骨も傷んでいる可能性があり、動かすことでさらに損傷することがあります。

固定して様子を見ます

受診いただければ、位置を整えたうえで隣の歯と固定し、数週間安静を保ちます。そのあいだ、その歯で噛まないようにしていただきます。多くの場合、時間の経過とともに安定していきますが、経過の確認は必要です。

受診後の流れ 1 状態を確認 レントゲンで骨も見る 2 戻して固定 位置を整えて安静に 3 経過を追う 神経の状態を確認する 4 必要な処置 変色や症状に応じて 必要な処置と期間は、けがの程度によって異なります

▲ その日で終わりではなく、経過を追う必要があります

5. あとから症状が出ることがあります

ぶつけた直後は何ともなくても、しばらく経ってから変化が現れることがあります。歯の色が濃くなってくる、噛むと痛む、歯ぐきが腫れる。これらは、内部の神経が損傷していた場合に見られる変化です。数か月後、あるいは年単位で経ってから出ることもあります。

そのときは治療が必要になります

神経が失われた場合には、根の治療を行って内部を清掃し、密閉します。変色が気になる場合は、内側から白くする方法や、被せ物で覆う方法があります。前歯の見た目に関わる処置では、自由診療(保険適用外)の材料を選べる場合もあります。

ぶつけたあとに気をつけて見ておくこと 歯の色が濃くなっていないか 噛むと痛みや違和感がないか 歯ぐきが腫れることはないか ぐらつきが残っていないか しみる症状が続いていないか 定期的に確認できているか 変化に気づいたら、時期を問わずご相談ください

▲ 落ち着いたあとも、しばらくは見ておいてください

6. お子さんの場合

乳歯が抜けた場合は、原則として元に戻すことはしません。あとから生えてくる永久歯に影響を与えるおそれがあるためです。ただし、ぶつけた衝撃が下にある永久歯の芽に及んでいることがありますので、受診して確認しておく必要があります。

永久歯に影響が出ることがあります

強い衝撃を受けた場合、永久歯の形や色に変化が現れることがあります。生えてくるのは何年も先ですので、そのときになって気づくことも少なくありません。乳歯のけがであっても記録を残しておくと、後々の説明に役立ちます。

乳歯と永久歯で対応が違います 比較項目 乳歯 永久歯 抜けた歯を戻す 原則として行わない 急いで戻す 急ぐ理由 下の永久歯への影響 時間で結果が変わる 受診の必要 必要 急いで必要 確認すること 永久歯の芽の状態 根と周囲の骨 その後の経過 生え変わりを見守る 神経の状態を追う 見た目の対応 生え変わりを待つ 必要に応じて処置

▲ 乳歯を元に戻さないのは、永久歯を守るためです

7. 起こさないための備え

スポーツ中の外傷は、マウスガードを装着することで軽くできることが知られています。接触のある競技では特に有用です。市販のものもありますが、お口に合わせて作ったもののほうが、装着感がよく、外れにくいという利点があります。

歯並びも関係します

前歯が前方に突き出している場合、ぶつけたときに損傷しやすいことが知られています。お子さんの歯並びが気になる場合、見た目だけでなく、こうしたけがのしやすさという観点からもご相談いただけます。

備えておけることもあります 備え も選択肢に マウスガード 接触のある競技では有用 歯並びの状態 突出していると損傷しやすい 対応を知っておく その場の判断が結果を分ける 効果の程度には個人差があります

▲ 起きてからの対応と、起こさない備えの両方があります

まとめ|乾かさず、頭を持って、すぐに受診

歯が完全に抜けてしまった場合、覚えておいていただきたいのは三つです。歯の頭の部分だけを持つこと、根を乾かさないこと、そしてできるだけ早く受診すること。牛乳か保存液に入れて運び、目安として30分以内、少なくとも1時間以内には歯科へお越しください。ブラシでこすったり、消毒液に浸けたりすることは避けてください。

欠けただけの場合も、破片を持参いただければ接着できることがあります。断面に赤い点が見える、強くしみるという場合は当日中の受診をおすすめします。また、直後に問題がなくても、数か月後に色が濃くなるなどの変化が現れることがあります。経過には個人差がありますので、変化に気づいたら時期を問わず大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。

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出典・参考資料

  • 公益社団法人 日本口腔外科学会
  • 一般社団法人 日本外傷歯学会
  • 公益社団法人 日本小児歯科学会
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。詳しくは歯科医師にご相談ください。