歯ぎしり・食いしばりにボトックスという選択肢|エラ張りにも

毎晩の歯ぎしりで歯がすり減っていく。マウスピースを作ったけれど、それでも朝はあごがだるい——大阪市西区・九条の当院では、こうしたお悩みに対してボトックス注射という選択肢もご案内しています。

美容目的で知られるボトックスですが、もともとは筋肉の過度な緊張をやわらげる医療目的で使われてきた治療法です。この記事では、歯科でどのように用いるのか、マウスピースとの違い、そして知っておくべき注意点を整理します。

目次

  1. 歯ぎしり・食いしばりの力はどれほどか
  2. ボトックスとは何をする治療か
  3. マウスピースとの違い
  4. エラの張りが目立ちにくくなることも
  5. 受けられない方・注意が必要な方
  6. 費用と通院の考え方
  7. 歯ぎしりに気づくためのサイン
  8. まとめ|まず負担を減らし、必要なら選択肢を増やす

1. 歯ぎしり・食いしばりの力はどれほどか

食事のときに歯にかかる力は、体重と同程度といわれます。ところが就寝中の歯ぎしりでは、その数倍の力がかかることがあるとされています。しかも意識がないため加減がきかず、数時間にわたって断続的に続きます。この負担が毎晩繰り返されることになります。

歯・あご・筋肉のすべてに影響する

強い力は歯のエナメル質をすり減らし、ひびを入れ、詰め物を破損させます。あごの関節には炎症を、噛む筋肉には慢性的な疲労をもたらします。さらに歯を支える骨にも負担がかかり、歯周病が進行している場合はその進み方を早めることがあります。

歯ぎしりが及ぼす影響 1 歯がすり減る エナメル質が失われ しみる原因にも 2 歯にひびが入る 割れて抜歯に つながることも 3 詰め物の破損 繰り返し外れる 作り直しが続く 4 あご・筋肉の疲労 朝のだるさ 頭痛や肩こりにも 毎晩数時間、加減のきかない力がかかり続けます

▲ 影響は歯だけでなく、あごの関節や筋肉にも及びます

2. ボトックスとは何をする治療か

ボトックスは、筋肉に働きかけて過度な収縮をやわらげる薬剤です。歯科では、噛むときに使う咬筋という筋肉に少量を注射します。筋肉の緊張がゆるむことで、歯ぎしりや食いしばりの際にかかる力そのものを抑えることを目的とします。

食事に支障が出ないよう調整する

筋肉の働きを完全に止めるわけではありません。日常の食事に必要な力は残したうえで、過剰な力だけを抑えられるよう量を調整します。硬いものが噛みにくく感じる時期が一時的にある場合もありますが、通常の食事に支障が出ないよう配慮して行います。

施術の流れ 1 診察・相談 筋肉の状態と適応を確認 2 量を決める 食事に支障が出ないよう調整 3 注射 咬筋に少量を注入 4 経過を確認 1〜2週間後に効果を評価 効果の実感までには1〜2週間程度かかります

▲ 施術自体は短時間で終わります

3. マウスピースとの違い

歯ぎしりへの対応として一般的なのはマウスピース(ナイトガード)です。両者は目的が異なります。マウスピースは、かかってしまう力を装置で受け止めて歯を守る「防御」の方法。一方ボトックスは、力そのものを抑える「軽減」の方法です。どちらが優れているというより、役割が違います。

併用することもある

マウスピースを使っていても、あごの筋肉の疲労や痛みが取れない方がいます。装置は歯を守れても、筋肉にかかる負担そのものは残るためです。このような場合に、ボトックスを組み合わせることで両面から対応する考え方があります。まずはマウスピースから始めるのが一般的です。

マウスピースとボトックスの違い 比較項目 マウスピース ボトックス注射 考え方 力を受け止めて歯を守る 力そのものを抑える 歯の保護 直接守れる 間接的に負担が減る 筋肉の疲労 残ることがある やわらぎやすい 保険 適用されることが多い 自由診療 持続 使い続ける限り 数か月ごとに繰り返す 装着感 慣れが必要な方も 装着するものはない

▲ 優劣ではなく、役割が異なります

4. エラの張りが目立ちにくくなることも

強い食いしばりが続くと、咬筋が鍛えられて発達し、あごのエラが張って見えることがあります。ボトックスで咬筋の過度な緊張がやわらぐと、筋肉のボリュームが徐々に落ち着き、輪郭の印象が変わる場合があります。歯ぎしりの治療に伴って生じる変化です。

見た目の変化には個人差がある

もともとの筋肉の発達具合や骨格によって、変化の程度は大きく異なります。骨格そのものが要因でエラが張っている場合は、筋肉に働きかけても見た目の変化は限られます。どの程度期待できるかは、診察で筋肉の状態を確認したうえでご説明します。

効果のあらわれ方(目安) 3〜6 か月 持続 効果が続く期間 おおむね3〜6か月が目安 効果が出るまで 施術から1〜2週間ほどかかります 持続期間や効果には個人差があります。継続の要否は経過を見て判断します

▲ 効果は永続的ではなく、数か月ごとの継続が前提です

5. 受けられない方・注意が必要な方

どなたでも受けられる治療ではありません。妊娠中・授乳中の方、妊娠を計画されている方、特定の神経や筋肉の疾患をお持ちの方、薬剤の成分に過敏症のある方などは対象外となります。服用中のお薬によっても判断が変わるため、事前の問診で必ず確認します。

起こりうること

注射部位の内出血や腫れ、一時的な噛みにくさ、まれに表情の左右差などが生じる可能性があります。多くは時間の経過とともに落ち着いていきますが、効果が完全に消えるまで待つ必要がある点は、あらかじめご理解ください。また効果の出方には個人差があり、期待どおりにならない場合もあります。こうした点を含めてご説明したうえでご判断いただきますので、ご不安な点は施術前に必ずお尋ねください。

適応と、注意が必要な場合 検討できる場合 ・歯ぎしり・食いしばりが強い ・マウスピースでも疲労が残る ・咬筋の張りが気になる ・詰め物の破損を繰り返す ・朝のあごのだるさが続く 受けられない・要相談 ・妊娠中・授乳中の方 ・妊娠を計画中の方 ・神経や筋肉の疾患がある方 ・成分に過敏症のある方 ・服用中の薬がある方は要相談

▲ 事前の問診で必ず確認します

6. 費用と通院の考え方

歯ぎしりに対するボトックス注射は自由診療(保険適用外)です。効果は永続的ではなく、おおむね3〜6か月で薄れていくため、継続する場合は定期的に繰り返すことになります。1回で終わる治療ではない点を、あらかじめご理解いただく必要があります。

まずは保険の範囲から検討する

当院では、いきなりボトックスをおすすめすることはありません。まずマウスピースで様子を見て、それでも筋肉の症状が残る場合や、繰り返し歯が破損する場合に選択肢としてご提案します。費用と効果の見通しをご説明したうえで、ご本人に決めていただきます。

当院での進め方 1 原因の確認 歯の摩耗とあごの状態を評価 2 習慣の見直し 日中の食いしばりへの対処 3 マウスピース 保険適用で歯を守る 4 必要なら注射 症状が残る場合の選択肢 まず負担の小さい方法から順に検討します

▲ いきなり自費の処置をおすすめすることはありません

7. 歯ぎしりに気づくためのサイン

そもそも自分が歯ぎしりをしているかどうか、自覚がない方がほとんどです。音を立てるタイプばかりではなく、無音で強く噛みしめているタイプも多くあります。ご家族に指摘されたことがなくても、歯ぎしりをしていないとは限りません。

口の中に残る手がかり

歯の先が平らにすり減っている、頬の内側に白い線状の跡がある、舌のふちに歯型がついている、詰め物が繰り返し外れる。これらは強い力がかかっている手がかりです。定期検診では、こうした変化がないかもあわせて確認しています。

歯ぎしりを疑うサイン 朝起きたときあごが疲れている 歯の先が平らになってきた 頬の内側に白い線がある 舌のふちに歯型がついている 詰め物が何度も外れる エラの張りが気になってきた 複数当てはまる場合は、一度確認をおすすめします

▲ 音がしないタイプの歯ぎしりも多くあります

まとめ|まず負担を減らし、必要なら選択肢を増やす

歯ぎしり・食いしばりは、歯だけでなくあごの関節や筋肉にも影響します。対応の基本は、日中の食いしばりに気づいて離すことと、就寝中のマウスピースで歯を守ることです。それでも筋肉の疲労や痛みが残る場合、力そのものを抑えるボトックス注射という選択肢があります。

ボトックスは自由診療で、効果は3〜6か月程度と永続的ではありません。また妊娠中の方など受けられない場合もあります。当院では、まず負担の小さい方法から検討し、必要な場合に限ってご提案しています。大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。

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出典・参考資料

  • 一般社団法人 日本顎関節学会
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
  • 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
  • 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品情報

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。本記事で扱う治療には自由診療(保険適用外)が含まれます。詳しくは歯科医師にご相談ください。