根の治療が終わってひと安心したところで、「次は土台を入れて、被せ物を作ります」と言われる。まだ通うのかと感じられた方もいらっしゃるかもしれません。痛みが取れたのだから、もう終わりでよいのではないか、というお気持ちはよく分かります。
けれども、神経を取った歯にとって、この工程はとても重要です。ここを省いた歯が数年後に割れてしまい、抜くことになる。実際に起こりうる経過です。大阪市西区・九条の当院で、なぜ被せ物までを一続きの治療とご説明しているのかをお伝えします。
目次
- 神経を取った歯に起きていること
- 土台は何のために入れるのか
- 被せ物は力を受け止める役割です
- 割れてしまうと、選択肢が減ります
- 被せ物の材料をどう選ぶか
- 治療を中断しないでください
- 入れたあとも確認が必要です
- まとめ|被せ物までが、根の治療です
1. 神経を取った歯に起きていること
歯の内側には神経とともに血管が通っており、水分や栄養を運んでいます。根の治療でこれらを取り除くと、その供給が止まります。木材が乾くともろくなるのと似て、歯も弾力を失い、割れやすい状態へと変わっていきます。見た目は変わらなくても、性質そのものが変わっているとお考えください。
痛みを感じないことが危険にもなります
神経がないため、その歯は痛みを知らせてくれません。ひびが入っても、むし歯が再発しても、気づく手がかりが減ります。定期的に確認する必要があるのは、この理由からです。自覚症状に頼れないぶん、外から見ておくしかありません。
▲ 見た目は同じでも、性質は変わっています
2. 土台は何のために入れるのか
根の治療では、歯の内側を大きく削って清掃します。その結果、残っているのは薄い壁だけという状態になることも珍しくありません。この空洞に材料を詰めて内側から補強し、被せ物を安定して支えられる形を作る。これが土台の役割です。
残っている歯の量で方法が変わります
壁がしっかり残っていれば、比較的簡単な方法で済みます。逆に、ほとんど残っていない場合には、根の中まで差し込む形の土台が必要になります。どちらを選ぶかは、残った歯の量と、その歯にかかる力の大きさから判断します。
▲ 被せ物までを、一続きの治療とお考えください
3. 被せ物は力を受け止める役割です
土台で内側を補強しても、それだけでは十分ではありません。噛むときの力は、歯を上から押すだけでなく、横に広げる方向にも働きます。この力が薄くなった壁を外へ押し開くと、根まで割れてしまいます。被せ物は歯全体を覆って、この広がりを抑えています。
詰めるだけでは足りない理由
穴を埋めるだけの処置では、外側から歯を締める働きが得られません。特に、強い力がかかる奥歯では差が出ます。前歯であれば覆う範囲を小さくできることもありますが、それも残っている歯の量によります。
▲ 外側から力を受け止められるかどうかの差です
4. 割れてしまうと、選択肢が減ります
歯が根まで割れてしまった場合、その多くは残すことが難しくなります。割れた面から細菌が入り込み、周囲の骨に炎症が広がるためです。接着して戻すことは、位置や割れ方によっては試みられますが、長く保つことは容易ではありません。
抜いたあとの負担も大きくなります
抜歯となれば、その部分をどうするかをあらためて考えることになります。入れ歯、ブリッジ、インプラント。いずれも費用と期間がかかり、隣の歯を削る必要が生じる場合もあります。今ある歯を守るほうが、結果として負担は小さく済みます。
▲ 痛みがないまま進むため、気づいたときには進行しています
5. 被せ物の材料をどう選ぶか
保険が適用される材料と、自由診療(保険適用外)の材料があります。保険の被せ物は費用を抑えられますが、金属の色が見えることや、材料によっては経年で変色することがあります。セラミックなどの材料では、見た目のほか、汚れのつきにくさという点でも違いがあります。
奥歯と前歯で優先することが変わります
奥歯では強い力に耐えられることが重要になり、前歯では見た目の自然さが優先されることが多くなります。どちらを重視するかによって適した材料は変わりますので、費用とあわせてご説明したうえで選んでいただいています。
▲ どちらが適しているかは、部位とご希望によって変わります
6. 治療を中断しないでください
根の治療が終わって痛みが取れると、通院が途切れてしまう方がいらっしゃいます。しかしこの段階の歯は、内部を清掃してふさいだだけの、もっとも無防備な状態です。仮のふたは長く持ちませんし、そこから細菌が入れば、根の治療をやり直すことになります。
やり直しは条件が厳しくなります
一度治療した根をもう一度やり直す場合、内部の形は複雑になっており、清掃も難しくなります。最初の治療に比べて条件が厳しくなることは知られています。せっかく終えた治療を無駄にしないためにも、被せ物までお進みください。
▲ 中断してしまった心当たりがあれば、ご相談ください
7. 入れたあとも確認が必要です
被せ物を入れれば終わりというわけではありません。境目の部分は汚れがたまりやすく、そこから再びむし歯になることがあります。しかも神経がないため、痛みという知らせがありません。定期検診で外から確認する意味は、ここにあります。
かみ合わせも変わっていきます
歯は少しずつすり減り、動きます。入れたときにぴったりだったかみ合わせも、年月が経てば変わります。特定の歯に力が集中していないかを見ておくことは、その歯だけでなく他の歯を守ることにもつながります。
▲ 痛みを知らせてくれない歯だからこそ、確認が要ります
まとめ|被せ物までが、根の治療です
神経を取った歯は、水分や栄養の供給が止まることで弾力を失い、割れやすくなります。しかも痛みを感じないため、ひびが入っても気づけません。内側を土台で補強し、外側を被せ物で覆うことは、この歯を守るための一続きの工程です。詰めるだけでは、噛む力で壁が外へ広がるのを抑えられません。
根まで割れてしまうと、多くの場合その歯を残すことは難しくなります。痛みが取れたところで通院が途切れてしまうと、仮のふたから細菌が入り、治療のやり直しになることもあります。被せ物の材料には保険のものと自由診療(保険適用外)のものがあり、部位とご希望によって適したものが変わります。経過には個人差がありますので、大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。
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出典・参考資料
- 一般社団法人 日本歯内療法学会
- 公益社団法人 日本補綴歯科学会
- 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。本記事で扱う治療には自由診療(保険適用外)が含まれます。詳しくは歯科医師にご相談ください。








