歯科の麻酔はなぜ痛い?痛みを減らすために行っている7つのこと

歯科が苦手という方にお話をうかがうと、その理由として麻酔の注射を挙げられる方がとても多くいらっしゃいます。治療そのものより、あの一瞬が怖い。大阪市西区・九条の当院でも、よくお聞きするお話です。

実は麻酔の痛みには、いくつかのはっきりした原因があります。そしてその多くは、手順を工夫することで小さくできます。この記事では、なぜ麻酔が痛むのか、そして痛みを減らすために当院で実際に行っていることを、順を追ってご説明します。

目次

  1. 麻酔が痛むのには理由がある
  2. 刺す前に、感じにくくしておく
  3. 針は細いほど痛みが小さい
  4. 薬液は温めて、ゆっくり入れる
  5. 緊張していると痛みは強く感じられる
  6. 麻酔が効きにくいことがあります
  7. 治療のあとに気をつけること
  8. まとめ|痛みには原因があり、対策があります

1. 麻酔が痛むのには理由がある

注射の痛みは、針が刺さる瞬間だけのものではありません。むしろ、薬液が組織の中に入っていくときの圧力による痛みのほうが大きいことがあります。加えて、薬液の温度が体温と違う場合や、注入の速さが急な場合にも痛みは強くなります。原因が複数あるということは、対策も複数あるということです。

痛みの原因を分けて考える

刺入時の痛み、注入時の圧力、薬液の温度、注入の速度。この四つに分けて考えると、それぞれに手の打ちようがあることが見えてきます。逆に言えば、どれか一つだけ工夫しても、他が乱暴であれば痛みは残ってしまいます。

麻酔が痛くなる4つの原因 1 針が刺さる瞬間 粘膜を貫くとき 表面麻酔で対応 2 薬液の圧力 組織が押し広げられる 痛みが大きい要因 3 薬液の温度 冷たいとしみる 温めて使う 4 注入の速さ 急に入れると痛む ゆっくり一定に どれか一つだけ工夫しても、痛みは残ってしまいます

▲ 原因ごとに、それぞれ対策があります

2. 刺す前に、感じにくくしておく

針を刺す前に、粘膜の表面に塗るタイプの麻酔を使います。ジェル状の薬をしばらく置いておくことで、表面の感覚が鈍くなり、針が入るときの刺激が小さくなります。効果が出るまでには時間が必要なので、待つ時間をきちんと取ることが大切です。

待つ時間を省かないこと

表面麻酔は、塗ってすぐに効くものではありません。十分に効く前に針を進めてしまえば、意味がなくなります。数分間しっかり置いてから次に進むこと。手順としては地味ですが、この差は実際に感じ方として現れます。

麻酔をするまでの手順 1 粘膜を乾かす 薬が効きやすい状態に 2 表面麻酔 塗って数分待つ 3 細い針で刺入 感覚が鈍った状態で 4 ゆっくり注入 一定の速さで進める 効果が出るまで待つことが、痛みの差になります

▲ 刺す前の準備に、いちばん時間をかけています

3. 針は細いほど痛みが小さい

針が細いほど、刺したときの刺激は小さくなります。当院では歯科用として使える中でも細い針を用いています。ただし細い針は薬液が通りにくくなるため、注入には時間がかかります。時間をかけられるかどうかも、痛みの少なさに関わってきます。

刺す場所も選んでいます

口の中には、痛みを感じやすい場所と比較的感じにくい場所があります。粘膜がやわらかく動きのある部分は、比較的刺激が小さくて済みます。同じ歯を治療する場合でも、どこから麻酔を入れるかによって感じ方は変わります。

痛みを減らすための工夫 比較項目 工夫した場合 そうでない場合 表面麻酔 十分に待ってから 省く・待たない 針の太さ 細い針を使う 太いほど刺激が強い 薬液の温度 体温に近づける 冷たいまま入れる 注入の速さ ゆっくり一定に 急いで入れる 刺す場所 感じにくい部位から 選ばずに刺す 所要時間 長めにかかる 短く済む

▲ 一つひとつは小さな差でも、積み重なると変わります

4. 薬液は温めて、ゆっくり入れる

冷たい薬液が組織に入ると、それだけで刺激になります。体温に近い温度に温めておくことで、この刺激を減らせます。また、注入の速さも重要です。急に入れると組織が一気に押し広げられ、圧力による痛みが生じます。ゆっくり一定の速さで進めることが基本です。

機械で速さを一定にする方法もあります

手で押す場合、どうしても速さにむらが出ます。電動の注入器を使うと、一定の遅い速度を保てるため、圧力による痛みを抑えやすくなります。使う場面は限られますが、こうした道具も選択肢のひとつです。

痛みの大きさを決めているもの 入れ方 で変わります 刺入時の刺激 表面麻酔と細い針で減らす 圧力による痛み 速さと温度の管理で減らす 緊張による増幅 説明と声かけでやわらげる 感じ方には個人差があり、部位によっても異なります

▲ 刺す瞬間より、入れ方のほうが影響することがあります

5. 緊張していると痛みは強く感じられる

同じ刺激でも、身構えているときほど強く感じられます。何をされるか分からない状態は、それ自体が緊張の原因になります。当院では、次に何をするのかをその都度お伝えしてから進めるようにしています。予測できるだけで、感じ方は変わります。

つらいときは手を挙げてください

治療中は口を開けているため、声を出しにくい状況です。あらかじめ合図を決めておき、痛みや不安を感じたら手を挙げていただくようお願いしています。すぐに手を止めますので、我慢して続ける必要はありません。

私たちがすること・お願いしたいこと 私たちがすること ・次に何をするか先にお伝えする ・表面麻酔を十分に効かせる ・細い針と温めた薬液を使う ・ゆっくり一定の速さで入れる ・効き具合を確認してから始める お願いしたいこと ・苦手なことを事前に伝える ・つらいときは手を挙げる ・過去に効きにくかった経験を伝える ・服用中の薬を教えていただく ・体調が悪い日は無理をしない

▲ 伝えていただくことで、対応できることがあります

6. 麻酔が効きにくいことがあります

強い炎症が起きている部分では、麻酔が効きにくくなることが知られています。膿がたまっている、ずきずきと痛みが続いている、といった状態がこれにあたります。この場合、量を増やすだけでは解決せず、入れる場所を変えたり、先に炎症を抑える処置を行ったりします。

痛いまま治療を続けることはしません

効いていない状態で処置を進めれば、痛みの記憶が残り、次の受診がさらにつらくなります。十分に効いていることを確認してから始めますし、途中で効きが弱くなった場合は追加します。遠慮なくお知らせください。

効きにくいときの対応 1 効き具合を確認 感覚を確かめる 始める前に必ず 2 追加する 足りなければ足す 時間を置いて再確認 3 方法を変える 入れる場所を変更 別の経路から効かせる 4 日を改める 炎症が強い場合 先に炎症を抑える 対応の方法は状態によって異なります

▲ 量を増やすだけが解決策ではありません

7. 治療のあとに気をつけること

麻酔が効いているあいだは、唇や頬の感覚がなくなります。この状態で食事をすると、気づかないうちに噛んでしまうことがあります。特にお子さんでは、感覚のない部分を繰り返し噛んで傷を作ってしまう例が見られますので、効果が切れるまでは食事を控えていただくようお願いしています。

効果が切れるまでの時間

使用した薬や量によって差がありますが、2〜3時間ほどで感覚は戻ってきます。熱い飲み物にも注意が必要です。感覚が鈍っているとやけどに気づきにくいためです。なお当院で行う麻酔はいずれも保険が適用され、自由診療(保険適用外)の追加費用をいただくことはありません。

麻酔のあとに気をつけたいこと 感覚が戻るまで食事を控える 熱い飲み物に注意する 唇や頬を噛まないよう気をつける 強くこすったり触ったりしない 腫れや強い痛みが続けば連絡する 運転前の体調に注意する お子さんは特に、噛んで傷を作りやすいのでご注意ください

▲ 感覚が戻るまでは、いつも通りとはいきません

まとめ|痛みには原因があり、対策があります

歯科の麻酔が痛むのは、針が刺さる瞬間だけが理由ではありません。薬液が入るときの圧力、薬液の温度、注入の速さ。それぞれに原因があり、それぞれに手の打ちようがあります。表面麻酔を十分に効かせる、細い針を使う、温めた薬液をゆっくり入れる。一つひとつは小さな工夫ですが、積み重なると感じ方は変わってきます。

また、緊張しているときほど痛みは強く感じられます。何をするのかを先にお伝えし、つらいときは手を挙げていただくようお願いしているのはこのためです。効き方や感じ方には個人差があり、炎症が強い部位では効きにくいこともあります。麻酔が苦手だというお気持ちは、そのままお伝えいただいて構いません。大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。

▶ 痛みの少ない治療について詳しくはこちら
▶ はじめての方へ
▶ むし歯治療・歯科一般
▶ 予防歯科・定期検診
▶ 24時間ネット予約

出典・参考資料

  • 一般社団法人 日本歯科麻酔学会
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
  • 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
  • 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品情報

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。詳しくは歯科医師にご相談ください。