ナイトガードは意味ない?歯が割れる前に知っておきたいこと

「ナイトガードを作ったけれど、歯ぎしりは治らなかった」——大阪市西区・九条の当院でも、こうしたお話をうかがうことがあります。効果を感じられないまま引き出しにしまってしまった、という方も少なくないと思います。

実はナイトガードには、そもそも歯ぎしりを止めるための装置ではないという前提があります。何のための装置なのかを知ると、使い方も、期待すべきことも変わってきます。この記事では、その役割と限界を整理してご説明します。

目次

  1. ナイトガードは歯ぎしりを止める装置ではない
  2. 守らなかった歯に何が起きるか
  3. 保険で作れます
  4. 使い続けるためのコツ
  5. 日中の食いしばりは別に対策が要る
  6. 効果を感じられないときに考えられること
  7. 検診で見ているのは歯だけではありません
  8. まとめ|止める装置ではなく、守る装置です

1. ナイトガードは歯ぎしりを止める装置ではない

ナイトガードの役割は、就寝中にかかる力から歯を守ることです。歯と歯のあいだに装置が入ることで、直接ぶつかり合うのを防ぎ、力を分散させます。つまり守るための装置であって、歯ぎしりという癖そのものをなくすものではありません。ここを取り違えると「効かない」という印象になります。

止められないなら何のためか

歯ぎしりは睡眠中に無意識で起こるため、意思では制御できません。止められない以上、現実的な対応は、かかる力を受け止める場所を歯以外に用意することです。装置がすり減ってくれれば、その分だけ歯は削られずに済みます。歯は一度失われた部分が自然に戻ることはありませんが、装置は作り替えることができます。すり減る対象を歯から装置に移し替えている、と考えていただくとわかりやすいかもしれません。

ナイトガードにできること・できないこと できること ・歯がすり減るのを肩代わりする ・歯にひびが入るのを防ぎやすくする ・詰め物・被せ物の破損を減らす ・あごの筋肉の負担をやわらげる ・朝のだるさが軽くなる場合がある できないこと ・歯ぎしりの癖そのものを止める ・日中の食いしばりを防ぐ ・入れていない日の歯を守る ・合わないまま使って効果を出す ・使わずに置いておいて効果を出す

▲ 期待する内容が合っていないと「効かない」と感じられます

2. 守らなかった歯に何が起きるか

就寝中の歯ぎしりでは、食事のときよりもはるかに強い力が長時間かかることがあるとされています。加減がきかず、数時間にわたって断続的に続くため、歯にとっては毎晩の負担が積み重なっていきます。表面のすり減りから始まり、やがて内部にひびが入ることがあります。

割れてからでは選択肢が減る

歯にひびが入っても、初期には症状がないことがほとんどです。進んで根まで割れてしまうと、多くの場合その歯を残すことが難しくなります。詰め物が繰り返し外れる、かむと違和感がある、といった段階で相談していただくのが理想です。

強い力が歯に与える影響の進み方 1 表面がすり減る 自覚症状なし 検診で気づける 2 しみはじめる 冷たいものがしみる この段階で相談を 3 ひびが入る かむと痛むことも 対応が難しくなる 4 割れる 強い痛み・腫れ 抜歯になることも 進み方には個人差があり、必ずこの通りになるわけではありません

▲ 初期には症状が出ないため、気づきにくい経過をたどります

3. 保険で作れます

歯ぎしりや食いしばりに対するナイトガードは、保険が適用される装置です。型取りをして製作し、後日お渡ししてかみ合わせを調整します。自由診療(保険適用外)の装置と比べて費用を抑えられるため、まず試していただきやすい方法だと考えています。

作って終わりではなく調整が要る

お渡ししたあと、実際に使ってみると当たる場所が出てくることがあります。そのまま我慢して使うと、かえって不快感が続きます。装着感に違和感があるときは調整で改善できることが多いので、次の検診を待たずにご連絡ください。

ナイトガードができるまで 1 診察・相談 歯の摩耗とあごの状態を確認 2 型取り お口の形を記録する 3 装着・調整 当たる場所を合わせる 4 定期的な確認 すり減りを見て作り替え 使い始めてからの調整で、装着感は大きく変わります

▲ お渡ししたあとの調整までが一連の流れです

4. 使い続けるためのコツ

どれほど良い装置でも、入れて眠れなければ意味がありません。最初の数日は違和感がありますが、多くの方は徐々に慣れていきます。慣れないまま中断してしまうのがもっともよくないので、続けやすくする工夫をあらかじめ用意しておくことをおすすめします。

置き場所と手入れを決めておく

枕元に専用のケースを置いておくと、装着を忘れにくくなります。手入れは、外したあと流水と柔らかいブラシで洗い、しっかり乾かすのが基本です。熱湯や熱い場所は変形の原因になりますので避けてください。

使い続けるための4つの工夫 1 置き場所を決める 枕元にケースを 忘れにくくなる 2 洗って乾かす 流水と柔らかいブラシ しっかり乾燥させる 3 熱を避ける 熱湯・車内は 変形の原因に 4 違和感は相談 我慢して使わず 調整を受ける 熱湯での洗浄や高温の場所での保管は変形の原因になります

▲ 続けられる仕組みを先に作っておくのがおすすめです

5. 日中の食いしばりは別に対策が要る

ナイトガードが守ってくれるのは就寝中だけです。ところが、力がかかっているのは夜だけとは限りません。作業に集中しているとき、緊張しているとき、無意識に上下の歯を接触させ続けている方が多くいらっしゃいます。こちらは意識で対処できる範囲です。

上下の歯は本来ほとんど触れていない

何もしていないとき、上下の歯のあいだにはわずかなすき間があるのが自然な状態です。日中ふと気づいたときに、歯を離して肩の力を抜く。これを繰り返すだけでも、あごの筋肉の負担は変わってきます。付箋を目につく場所に貼る方法もよく使われます。

力がかかっているのは夜だけではない 日中 も見直す 就寝中の力 ナイトガードで受け止める 日中の食いしばり 気づいて離す習慣で減らす 両方への対応 組み合わせて負担を下げる 感じ方や必要な対策には個人差があります

▲ 装置で守れるのは、あくまで就寝中の分だけです

6. 効果を感じられないときに考えられること

使っているのに変化がない、あるいは以前より不調が増えたという場合、いくつかの原因が考えられます。多いのは、装置が合っていない、装着できている日が少ない、あるいは症状の原因が歯ぎしり以外にあるという場合です。原因によって次の手が変わります。

他の要因が隠れていることもあります

あごの痛みや頭痛には、顎関節の状態や姿勢、生活習慣など複数の要因が関わることがあります。ナイトガードで改善しない場合は、あらためて原因を見直す必要があります。当院ではマウスピースのページでも、対応の考え方をご案内しています。

効果を感じないときに確認したいこと 週の半分以上は装着できている 朝まで外れずに残っている 特定の歯だけ強く当たっていない 装置がすり減ってきていないか 日中の食いしばりに気づけている 作ってから1年以上経っていないか 当てはまる項目があれば、調整で改善できることがあります

▲ まずは使えている日数と装着感から確認します

7. 検診で見ているのは歯だけではありません

定期検診では、むし歯や歯周病だけでなく、強い力がかかった痕跡もあわせて確認しています。歯の先が平らになっている、頬の内側に白い線がある、舌のふちに歯型がついている。こうした変化は、ご自身では気づきにくいものです。

作り替えの時期も検診で判断します

ナイトガードは使ううちにすり減り、穴が開くこともあります。薄くなった装置では守る力が落ちますので、状態を見て作り替えの時期をお伝えします。装置を持参いただければ、その場で確認できます。

ナイトガードと日中の対策の役割 比較項目 ナイトガード 日中の対策 対象となる時間 就寝中 起きているあいだ 働き方 力を受け止める 力そのものを減らす 意識の必要 装着すればよい 気づく習慣が要る 費用 保険が適用されます 費用はかからない 続けやすさ 置き場所の工夫が要る きっかけづくりが要る 歯を守る力 直接守る 間接的に減らす

▲ どちらか一方ではなく、組み合わせて考えます

まとめ|止める装置ではなく、守る装置です

ナイトガードは歯ぎしりをなくすための装置ではなく、就寝中にかかる力から歯を守るための装置です。装置がすり減って肩代わりしてくれる分だけ、歯は削られずに済みます。この前提を知っておくと、期待すべきことと、そのための使い方がはっきりします。

保険が適用されるため試していただきやすい一方、装着できた日数と装着感がそのまま結果に影響します。合わないと感じたら我慢せず調整をお受けください。また日中の食いしばりには別の対策が必要です。効果や経過には個人差がありますので、気になる症状があれば大阪市西区・九条のうえすぎ歯科クリニックまでご相談ください。

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出典・参考資料

  • 一般社団法人 日本顎関節学会
  • 公益社団法人 日本補綴歯科学会
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
  • 公益社団法人 日本歯科医師会「テーマパーク8020」

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。詳しくは歯科医師にご相談ください。